なぜだか涙が止まらない
なにかあったわけじゃない
彼女は電話の向こうで泣いていた
相談したいけど言葉がうまく出てこない
涙を止めたいわけでもない
泣いてる理由がわからないから。
しばらく沈黙の時間が流れた後
彼女は
「自分がどうしたいのかがわからない」と。
私は
「どうしたいか分かっていないとダメなの?」
彼女は
「どうしたいかがわからないから、生きてる意味がわからない」
私は
「生きてる意味は私もわからない」
噛み合わない会話をしたあと
私は
「今日、朝起きて一日何してた?」
彼女は朝から一日の出来事を話し始めた
私とよく似た一日だった
よく似た一日を過ごした私は
涙が出る様子はない
私 「コーヒーは好き?」
彼女 「紅茶の方が好きです」
私 「紅茶の何が好き?」
彼女 「ダージリンです」
私 「ダージリンのどこが好き?」
彼女 「香です」
私 「最近、飲んだ?」
彼女 「はい」
私 「いつ?」
彼女 「昨日」
私 「深くたっぷり味わった?」
彼女 「・・・」
私 Googleでダージリンと検索した
「ダージリンは標高2000mのヒマラヤの傾斜面で育つ茶葉で、昼夜の寒暖差で生まれる霧が独特の香りをつくり出し、ほのかなあまみと渋みがあいまって炭酸のような口あたりから、紅茶のシャンパンって呼ばれてるんだって。」
彼女 「へ~ そうなんですね」
私 「ほんとにそうなのか試してみたら?」
彼女は少し楽し気な声で
「試してみます♡」
心がカサカサした時は、
小さな時間でいいから
自分の好きなことを楽しむといい
誰かと大騒ぎしなくても
大きな声で笑わなくても
大きさじゃなくて
深さのある楽しみ
なにをしたいか見つからないものを探すより
深さのある楽しみを感じる時間をすごす
それが生きてるってことじゃないのかな
やりたいこと、生きてる意味
大きなテーマなんてなくて
小さな積み重ねじゃないかな
ダージリンを飲みながら
彼女は気付いたでしょうか